愛とロマンな日常

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【時系列で振り返る一戦】1995.10.9 IWGPヘビー級選手権試合 武藤敬司 対 高田延彦

1995年10月9日、長州と高田の電話会談に端を発した新日本プロレスとUWFインターナショナルの抗争は、クライマックスを迎えようとしていました。

激突!!新日本プロレスUWFインターナショナル全面戦争と銘打たれた、東京ドームでのシングルマッチ主体の団体全面対抗戦は、メインイベントに武藤敬司と髙田延彦の、IWGPのベルトをかけたシングルマッチが組まれました。

この一戦は、まさにストロングスタイルと総合格闘技スタイルの最終決戦として組まれた、世紀の一戦であったわけです。
新日本のストロングスタイルが強いのか、U系の総合格闘技志向のスタイルが強いのか。
全日本プロレスの選手対新日本プロレスの選手のシングルマッチがなかなか実現しなかったように、基本的には団体対抗戦が実現されない時代でしたから、この一戦は当時のプロレスファンにとって、まさに夢のような一戦だったのです。
今回はその世紀の一戦を時系列にまとめ、振り返ってみたいと思います。

試合開始。手の探り合いからグラウンドの攻防へ。

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試合開始。双方どう試合を展開させていくか、相手の出方を見ながらの攻防だったと思います。

出だしの2分間は、グラウンドでの攻防に終始。オーソドックスな試合運びとなりました。

グラウンドはどちらかと言うと、高田の主戦場。それにしっかりと応対する武藤もさすがというところか。

3分過ぎに武藤が一本背負いを仕掛けるが、これは失敗。5分手前に逆に高田がヒールホールドの態勢に入り、場内がワッとなります。最初の盛り上がりです。

態勢を入れ替え、ヒールホールドを逃れた武藤は、電光石火のエルボードロップを仕掛けますが、これは不発におわります。

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開始6分、高田はローキックからタックルを仕掛け、再度グラウンドの攻防へ。まだまだ双方機を伺いながらの試合運び。

7分、武藤が動きます。グラウンドのヘッドバッドから、キック、ローリングソバットで畳み掛け、高田からダウンを奪う。

それに対し、高田も応戦。ロー、ミドル、ハイのコンビネーションで、武藤からダウンを奪い返します。

8分30秒、スタンドの攻防が続きましたが、武藤が高田のミドルキックをキャッチ。今度は武藤からグラウンドに誘いますが、高田に裏アキレス腱固めを決められ、ロープに逃げます。

前半戦は、グラウンドの攻防が中心のオーソドックスな展開となりました。

どこで試合が動くのか、そのあと、試合はどういう決着を迎えるのか。

観戦者は皆、歴史の証言者たらんと、固唾を呑んで試合を見守っています。

試合中盤。投げ技の応酬。プロレスの醍醐味

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裏アキレス腱固めをロープブレイクで逃れた武藤でしたが、高田はローキックから膝蹴りで追撃します。

しかし、これは武藤の罠でした。肘を使って膝蹴りをガードすると、一瞬の隙をついてバックに回り、投げ捨て式のジャーマンスープレックスを放ちます。

試合開始から10分経過で放たれた、この試合初めての投げ技に場内は沸き立ちます。

さらに武藤は、高田を引き起こし、バックドロップで追撃。

続いてムーンサルトプレスを狙うも、これは自爆。

逆に高田は、自爆した武藤にミドルキックを3連発で見舞い、ダウンを奪うと、必殺の腕ひしぎ逆十字を仕掛けます。決まったら武藤の負け、が分かっているため、ここでも場内が沸きます。

11分30秒経過。武藤は中腰になって腕ひしぎから逃れます。高田は攻撃の手を休めず、ミドルキックを連発。武藤もナックルパートで反撃しますが、再度放たれた高田のミドルキックでダウン。

ここで高田はバックドロップを放ち、プロレスラーとしての意地を見せます。沸く会場。高田は再度腕ひしぎ逆十字をトライ。武藤、ロープに逃れ、ブレイク。

高田はここを勝機と膝蹴りのラッシュを見舞います。武藤はたまらず高田の腰あたりに突進。ロープに押し込んでロープブレイクを得ます。

中盤を終わって高田に試合が傾きつつありました。ストロングスタイルの終焉か。いや武藤ならなんとかしてくれるはず。新日ファンは不安と期待が入り混じった目でリングを見つめます。一方、UWFファンはここで一気に試合を決めてくれ、と高田のキック、もしくはサブミッションに期待をかけます。

試合終盤。武藤の奇策が奏功。プロレスの奥深さを体現。

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追い込まれた武藤は、得意のトリッキーな動きで、虚を突く形で高田に突進をかけるも、カウンターの膝蹴りを顔面に食らってしまいます。武藤ピンチか、と満場のファンが思った瞬間です。

高田は一気呵成とばかりにミドルキックで追撃をかけます。

しかし開始13分20秒、ここで、この試合の一番の山場を迎えます。

ミドルキックを放った高田の足をとり、追い詰められたと思われた武藤がまさかの奇策、ドラゴンスクリューを放ったのです。

この技は藤波辰己のオリジナルで、これまでは、テイクダウンを狙う時の「つなぎ技」でしか使われていなかった技でした。この技がここまで効果的に放たれるとは、だれも予想だにしなかったのです。

しかし、この日、武藤が放った一撃は、見てるだけも説得力充分の決まり具合でした。

予想外の技に、受け身をしっかりとれなかった高田は、苦悶の表情を浮かべます。

武藤はここで、止めとばかりに足四の字固めを極めます。このオールドで平凡な技のチョイス、しかしがっちりと決まっているために苦しんでいる高田、場内のボルテージは最高潮に高まります。

極まっている武藤の左足を自らの頭の上に持ち上げて耐える高田。しかしリングの中央近く。声をあげて苦しむ高田。

開始14分30秒。執念で高田はかろうじてロープに逃れます。

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足四の字が効果的とみてとった武藤は、ロープに逃れたあとも、執拗に高田の足をとって足四の字を狙います。それに対し、高田はキックで応戦。

開始から15分。そのキックの脚をとらえた武藤が、とどめのドラゴンスクリューを放ちます。首をひねり、耐える高田の表情が印象的です。

しかし、窮地に陥った高田は、ここで反撃に転じます。執拗に脚を狙う武藤に対して、掌底、膝蹴り、ハイキックのコンビネーションを見舞い、ダウンを奪う。

一気に試合を決めたい高田は、続けてミドルキックのラッシュをかけます。さらに脚をとった武藤に、延髄切り。

再度高田に試合が傾くかと思われましたが、ここまででした。執拗に右足を狙った武藤の攻撃の影響で、高田は右膝を故障し、キックにも本来の力がなかったものと思われます。一箇所集中攻撃は、プロレスのセオリー。セオリーに忠実に攻めた武藤に軍配が上がったのです。

15分50秒。延髄切りを放った高田でしたが、先に武藤が立ち上がり高田の脚をとって、再度足四の字固めを極めます。ポジションはリング中央。万事休すか。声を挙げて耐える高田。

16分16秒。必死に逃れようとした高田でしたが、ここでギブアップ。勝負ありです。武藤の勝利。ドラゴンスクリューの奇襲で流れをつかみ、その後執拗に右膝を狙った武藤の定石の攻めが、高田の気迫を上回りました。キラリとひかる武藤のプロレスセンス。天才(ジーニアス)の異名通りの試合運びでした。

終わりに

団体の興亡をかけたまさに世紀の一戦は、武藤の勝利で終わりました。

頭から危険な角度で落とす投げ技が主体となっていたプロレス界において、ドラコンスクリューから足四の字固めにつなぐフィニッシュは、古典的、且つ説得力充分で、武藤の際立ったプロレスセンスを体現して余りある流れで、衝撃的なものでした。

もはやこの試合から、20年が経過したのですね。それでも色褪せない、20世紀を代表する名勝負であったと言えましょう。