愛とロマンな日常

愛とロマンな日常

私の私による私のためのブログ

私的司馬遼太郎「翔ぶが如く」名場面集

司馬遼太郎作品で読み応えナンバーワン作品といえば、やはり「翔ぶが如く」でしょう。文春文庫で全10巻にわたる物語は読み応え十分です。

西郷隆盛の名前は知っていたけど、具体的になにをしたのか。明治維新は知っていたけど、武士達は、どのように大人しく支配者階級を明け渡したのか。

歴史の授業だけで、なんとなくわかっていたけど、真相がはっきりしない明治維新から明治初期に起きた出来事を理解する糸口となる日本人の必携書といえましょう。

当記事では、そんな司馬遼太郎の名作「翔ぶが如く」の名シーンを独断と偏見に満ちた私的ランキング形式で紹介して行きます。

※あくまでも私的ランキングです。私の感覚以外、何の根拠もありません。

村田新八が洋行から帰朝するシーン~第四巻より

村田新八は岩倉や大久保とともに洋行するが、美術や音楽に対して興味をもち、美術館やオペラ鑑賞によく行っていた。

それまでちょんまげを結った地方武士だった人物が、突然、パリの西洋文化に触れ、そしてその後、まだ江戸時代の風情が色濃く残る日本に帰ってきて、さらに鹿児島という一地方に下野することを決意するシーン。

すごいカルチャーショックだったのだろうなと思う。まるでマンガでよくある「タイムマシーンに乗った武士」のようなことが実際に起こったのだ。

にも拘わらず、結局は、鹿児島に帰省することを決めるとは、どれだけ西郷が好きなのだろう。

三条実美征韓論を巡り西郷を裏切るシーン~第二巻・第三巻より

三条は貴族なので自分の意見がない。大久保や岩倉、木戸が洋行している間に西郷に押し切られて征韓論閣議決定するも、信念があって賛同したわけではなく、その後洋行から帰ってきた大久保や岩倉が征韓論に反対する意向であることを知り、怖くなって征韓論反対の立場に立ち、西郷を裏切る。

にもかかわらず、その後、閣議の趨勢が怪しくなると、大久保も裏切って再度征韓論賛成に立場に立つなど、国家の首席としての重責にありながら、優柔不断な態度を繰り返し、最後には盟友岩倉にも突き放され、人事不省に陥る。

そのあまりにものヘタレっぷりに笑いが止まらない。

大久保利通が命懸けで征韓論を巡る議論で西郷に勝利するシーン~第二巻・第三巻より

大久保利通は西郷とは維新の同士であり、かつ同郷の幼馴染だ。そんな西郷の唱える征韓論に反対し、引導を渡す役を引き受けることを決意する。

引導を渡す役を引き受けるにあたっては、遺書をつくって息子に残すほどの覚悟で挑むのだが、その白熱した議論のシーンは圧巻だ。 

西郷が、大久保や岩倉の留守中に決めたことであったとしても、参議として起案して閣議決定し、天皇の裁可も得たものだと主張したものに対し、大久保は、自分や岩倉が留守中には、重要な案件は決定しないという約束だったと、反論する。

西郷にとって、その点が急所だったため、そんな約束は知らんと白を通そうとするのだが、大久保はそれを逃さず

「それを今になっていうのは卑怯だろう」

と罵るのである。当時の武士の棟梁たる西郷、そして武士の中でも最も武士道にこだわる薩摩武士の棟梁たる西郷にとって「卑怯」という言葉を浴びるのは最大の屈辱であった。

「お控えやんせ」

ーお前今なんつった、もういっぺんいってみろ。くらいのセリフだろう。

国家の最高会議で、これから戦争をするかどうかの議題でこのやりとり。

迫真の描写に魅かれるのである。

江藤新平佐賀の乱に乗せられるも瞬殺されるシーン~第四巻より

江藤新平は切れ者の司法大臣で、大久保利通と政策をめぐって真っ向勝負するのだが、結局薩摩の大久保の前に肥前の江藤は敗北する。

これほどの切れ者であるにも拘わらず、故郷佐賀の武士たちによって蜂起された国家への反乱の首謀者に祭り上げられ、あれよあれよという間に敗北、裁判の機会も与えられず、大久保に処刑されてしまう。

なぜ、江藤ほどの切れ者が、なんの勝算もなく、反乱の首謀者となり、勝ち目のない蜂起を行ったのか。後に続く萩の乱、そしてこの小説の主題である西南戦争に続く明治初期の反乱は、すべて政府軍によって鎮圧されてしまうのだが、そのルーツがこの事件に凝縮されているように思えるのだ。

大久保利通台湾出兵の賠償金を獲得するため清国と交渉を行うシーン~第五巻より

明治政府は、維新後、特権も剥奪された武士たちの不満の矛先を海外にむけるために、いいがかりをつけて台湾に出兵するのだが、その終戦交渉で清国にむかった大久保と清朝政府との交渉内容は凄まじいものだった。

ほぼ言い掛かりで台湾に出兵したにも関わらず、大久保は清朝政府に対し、逆に賠償金を請求するのである。

ほぼヤクザの手口だ。

無理を通す図々しい大久保の交渉手口は、読んでいて逆に気持ちがいい。

西南戦争で敗色濃厚となってからの薩軍の動向を描くシーン~第九巻・第十巻より

残虐趣味というか、 「熊本城などはこの青竹一本で足りる」と豪語し、なんの戦略を持たずに戦争を開始した薩軍が結局敗戦し、宮崎県あたりを拠点を変えながら敗走するシーンを読むのが好きだ。

なんでなんの戦略もなく勝てると思ったのか。

結局この時代の反乱は、先の佐賀の乱でもそうだったが、確たる戦略も持たずに蜂起した反乱軍の敗北で終わるのである。

勝つ気がなかったのかなどと思ってしまう。

武士道だけでは、戦争に勝てなかった事実。江戸時代から明治時代への歴史の転換がこの一事からも明らかになっているのである。

翔ぶが如く〈1〉 (文春文庫)

翔ぶが如く〈1〉 (文春文庫)

 

 

広告を非表示にする